『ふたたび』という映画を見ました。ハンセン病を患い、五十年間療養所に置かれていた老人が晴れて療養所を出て華族の元に戻り、旧友との再会を果たすという内容の映画です。孫の運転する車に乗り、旧友の元を順に訪れる道程も映されており、ロードムービーとしての要素も持っています。
心に染みる名作で、特に老人が孫から投げかけられた「ジャズって何なの?」という問いに対し、財津一郎演ずる老人が「生きる事」と答えるシーンは特に印象的です。
人の営みと言うものは何か物悲しいものです。そして、全ての行為が「生きる事」なのかも知れません。随分前に出版された絵本『葉っぱのフレディー』も人間の本質に触れるもので、さもするとニヒルに思えてしまう人間の営みも実はその存在自体がこの世界に対して何らかの影響を与えており、決して無駄ではないと説いています。
さて、件の『ふたたび』という映画では、終盤で老人は五十年前に別れた旧友との再会を果たし、実現せずに分かれてしまったジャズのライブを行う事となります。そして、老人は力尽きたところで吹いていたトランペットを孫に渡し、抱えられるようにして楽屋に下がります。その後は現実とも虚構ともとれるシーンが続き、老人は、お互いを思い続けながら死別した恋人の痕跡に触れる事となります。
人の根源に迫る佳作です。