差動入力回路失敗したからオペアンプ使う

電圧増幅:オペアンプ、電力増幅:トランジスタプッシュプル

オペアンプのような、差動入力のヘッドホンアンプを作ってみました。しかし、どうも負帰還が上手くかからず、出力がオフセットしてしまっています。出力側にコンデンサを入れれば良いのですが、差動入力アンプのDCから増幅できる良さが無くなってしまいます。

正直なところ、DCから増幅できるようにしたところで、良いことは全くと言ってよいほどなくて、一歩間違えば接続したヘッドホンを破壊してしまう危険性もあります。ですから直流をカットするためのコンデンサを入れればそれでOKなのですが、拘ってみたいのです。

差動入力部分とプッシュプル電力増幅部を組んでみたのですが、オフセットがひどくて使い物になりません。

ちょっと一息つきたかったので、昔作ったオペアンプで作った電圧増幅に、A-B級プッシュプル電力増幅段をドッキングさせたヘッドホンアンプを引っ張り出して、気分転換に聞いてみました。ここ最近はトランジスタオンリーのヘッドホンアンプばかりを聞いていたのですが、昔作ったヘッドホンアンプのおおらかな音が結構いいんです。

オペアンプ昔作ったオペアンプ+トランジスタのヘッドホンアンプ

この音の違いは動作電圧と、プッシュプル段の貫通電流対策に起因しているのではないかと思っています。貫通電流というのは、プッシュプル増幅回路で、信号の+部分を担当するトランジスタと、マイナス部分を担当するトランジスタが同時にONになったときにトランジスタに流れる電流です。

A-B級動作のアンプは、スイッチング歪を無くすために+側と-側のトランジスタをわずかにオーバーラップして動作させますので、貫通電流はどうしても発生します。電源電圧を低くすれば貫通電流による影響は少なくなるのですが、オペアンプは低い電圧で動作させると特性が悪くなるのである程度の電圧はかけたいんです。

困ったことに、貫通電流が発生するとトランジスタは発熱します。トランジスタが発熱すると、トランジスタの特性が変化し、+側と-側のオーバーラップが大きくなってしまいます。オーバーラップが大きくなる→貫通電流大きくなる→トランジスタ更に発熱する→オーバーラップもっと大きくなる・・・・トランジスタ燃える・・・となります。これをトランジスタの熱暴走と言います。

トランジスタの熱暴走を手っ取り早く抑えるには、+側トランジスタの出力と-側トランジスタの出力間に抵抗を入れてあげればいいんです。ただ、抵抗を入れるとダンピングファクターが下がってヘッドホン(スピーカー)の振動版の追従性が悪くなります。ヘッドホンの振動版は軽く、慣性が小さいため、ダンピングファクターの影響はそれほど大きくないのですが、それでも影響がないわけではありません。ヘッドホンの場合、ほんの僅かですが、音がふくよかになったように聞こえることがあります。

改めて聞くと、ちょっとふくよかになった音が意外と良いことを再確認しました。そこで、原点に立ち返ってオペアンプで電圧増幅を行い、トランジスタで電力増幅を行うヘッドホンアンプを作ってみました。オペアンプの増幅率を決める負帰還は、従来型はトランジスタの出力側から取っていましたが、今回はオペアンプの出力端子から取ることにしました。これで電力増幅部をループバックの外側に追い出しました。そもそもA-B級プッシュブルではほとんど歪みは発生しません。そしてLTSpiceでのシミュレーション結果では、オペアンプ単体でループバックさせた方がノイズが小さいという結果が出ました。

出来上がったのがコレです。

使用したオペアンプはNJM4558Dで、設計の古いオペアンプです。スルーレート(これが大きいほど入力信号に対する出力の追従性が高い)は1V/μs程で、お世辞にも性能が良いオペアンプではありません。そのかわり、位相を補償する回路が内蔵されていますので、発振することは先ずありません。その他、出力端子に過剰な電流が流れた場合、シャットダウンするように保護回路も内蔵されていますので、かなり使いやすいです。お値段も格安です。

一方、最低でも±4V(つまり8V)の電源電圧が必要で、ある程度の電圧をかけてあげないと、なんとなく眠い音になってしまいます。そこで、今回はUSBの5V電源を12Vに昇圧するモジュールを基板上に取り付けました。これを分圧して±6Vで動作させています。電力増幅部はSS8050とSS8550のコンプリペアで、最大出力は2Wです。

心配していた昇圧モジュールからのノイズは全く気になりません。NJM4558もなかなかいい仕事をしてくれます。オフセットも小さく、電源投入時のポップノイズも非常に小さく抑えることができました。

昔は、抵抗類は寝かせて、基板を広く使うレイアウトが好みでしたが、最近は抵抗類は立てて実装し、回路自体をコンパクトに密度感を持たせた回路にカッコよさを感じています。

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