偽物オペアンプをつかまされました。Aliexpressで買ったオペアンプが偽物でした。
先日作ったヘッドホンアンプの電圧増幅部分に使うオペアンプを取り換えて、出力波形を見ながら比較しました。その中で、TL082の波形が異様でした。こんな感じです。↓
0Vのあたりに段があります。恐らくクロスオーバー歪みだと思われるのですが、真正TL082ならば出力段はAB級になってるはずですので、クロスオーバー歪みは出ないはずです。
等価回路を見ても、出力バッファはNPN型とPNP型のトランジスタを使用し、64Ωと128Ωの抵抗を介して出力端子に出ています。双方のベース端子間には二つのトランジスタを使ってボルテージシフトを行い、バイアス電圧を作っています。これで、+側トランジスタと-側トランジスタが一部オーバーラップして動作するAB級動作をするはずで、クロスオーバー歪みは出ないはずです。ところが出ています。
色々とネットを検索していましたら、こんな記事を見つけました。
なるほど、私が両電源オペアンプTL082だと思っていたオペアンプは、偽物オペアンプでした。しかも、単電源オペアンプであったようです。偽物オペアンプ確定&単電源オペアンプのリマーク品だったようです。手許にあるTL082(偽物確定)を拡大して良く見ると、TIのロゴがチョット変ですね。
色々とネットを検索してみると、TL082の兄弟であるTL072の偽物をつかまされた人もいて、恐らく中身はLM358ではないかと考察されていました。しかし、せっかく買ったものですから、何とか使う手立てはないだろうかと色々と情報を探してみました。要は+電源とー電源の二つの電源で動作させたときの0V付近にあるクロスオーバー歪みが消えてなくなれば良いわけです。先ほど参照した日清紡マイクロデバイスのHP上の記事に、こんなことが書いてありました。”・・・クロスオーバーひずみを発生することになります。この問題を避けるためには出力―GND端子間に抵抗を入れてアイドリング電流を確保するようにして下さい。”
早速試してみましょう。今回はブレッドボード上で回路を組み、検証してみます。
今回はできるだけシンプルな回路で検証したかったので、増幅度0dBの非反転増幅回路としました。最初に前回の測定結果で出てきた、クロスオーバー歪みが出る現象を再現しました。
測定条件は前回と同じく20kHzの矩形波をオペアンプの+入力端子に入れました。
次に出力端子を1kΩの抵抗を介して-電源に接続しました。
見事にクロスオーバー歪みは無くなりました。これで何とか使い物になりそうです。しかし、ここまでの改造をしてまで偽物オペアンプのTL082を使う理由はありませんので、やはり偽物オペアンプは別の目的で使うことにしようと思います。
ちなみに、スルーレートを算出してみました。これで中身が判るかも知れません。↑の波形測定時にカーソルを追加してみました。画面左上の数値T=5.30μs,V1=1.89からスルーレートを求めます。スルーレートは1.89/5.30=0.357V/μsでした。LM358のデータシートを見ると、スルーレートは0.3Vと記載されていましたので、単電源動作であることと併せて考えると、中身はLM358であると断定して良さそうです。
それにしても、もともとチップ表面に記載されていた型番を消して、レーザー刻印機で偽の型番を刻む手間をかけて、どれほど儲かるものなのでしょうか。