s8050とs8550 謎のトランジスタを使う

何年か前に、アリエクでトランジスタの詰め合わせを購入しました。その中に、謎のトランジスタS8050とS8550が入っていました。入手した当初は、SS8050とSS8550の互換品かと思っていました。しかし、調べてみると別物であることが解りました。

SS8050とS8050の違いは?

両者の型番はとても似ています。S8050の相補トランジスタはS8550です。そして、SS8050の相補トランジスタはSS8550です。型番はSが一つか二つかの違いです。また、パッケージはどちらもTO92と呼ばれるタイプで、全く同じです。しかし、電気的な特性は結構違います。SS8050の最大コレクタ電流は1.5Aです。そして、S8050は0.5Aです。したがって、取り出せる電力はSS8050の方が多いということになります。その他の項目についても、差があります。しかし、電気的特性については、使用目的によって適・不適があります。したがって、両者の優劣をつけることはできません。あえて言えば、S8050はSS8050と比較して、安価に販売されています。

謎多きトランジスタs8050は中国製?

プッシュプル増幅回路の定番トランジスタとして有名なSS8050と間違いやすいS8050という型番は怪しいです。何となく間違うことを当て込んだのではないかと勘繰ってしまいます。もしかすると、SS8050の互換品を作ろうとして失敗したのかも知れません。いずれにせよ真意は不明です。しかし、S8050は中国製の玩具等に使われていることが多いようです。私が入手したのも中国のオンラインショッピングです。ですから、S8050は中国製である可能性は高いと思います。

謎のトランジスタは使い物になるのか?

S8050から取り出せる電力は、SS8050と比較すると小さいです。しかし、電子工作で多用される2SC1815等と比較すると、随分大きな電力が取り出せます。そこで、手許にあるS8050とその相補であるS8550を使って、ヘッドホンアンプを作ってみたいと思います。手許にあるS8050とS8550は、偶然にも6個づつです。電力増幅部はNPN4個とPNP4個で構成されています。そして、電圧増幅部は1段目と2段目ともにNPNを使用していました。しかし、これではNPNのS8050が不足し、PNPのS8550が余ってしまいます。そこで、設計を変更して、NPNとPNPを同数使用するようにします。つまり、電圧増幅の2段目をPNPに変更して設計し直します。

回路図出来上がり

そして、出来上がった回路図がこれです。これまで、電圧増幅に使用していたトランジスタBC547の代わりに、s8050とs8550を使用しました。

s8050,s8550使用ヘッドホンアンプ回路図
s8050,s8550使用ヘッドホンアンプ回路図

今回使用するトランジスタは、最大コレクタ電流が0.5Aとなっています。これは、これまで使用してきたBC547の100mAと比較して大きくなっています。そのため、思い切って電圧増幅部のアイドル電流を大きくしました。これにより、ステージ間の損失が小さくなり、出力を大きく取れるはずです。そして、NPNとPNPを同数にするため、電力増幅の二段目をPNPにしました。これにより、かなり変則的な回路になってしまっています。(お恥ずかしい)

なお、電力増幅部は、バイアス回路も含め、トランジスタを置き換えた以外は変更を加えていません。

実際に組んでみました

s8050とs8550を使用したヘッドホンアンプ
S8050とS8550を使用したヘッドホンアンプ

LTSpiceでのシミュレーションと、ブレッドボードでの動作確認を行い、良好でしたので本組してみました。実際に音楽ソースに接続して鳴らしてみました。そして、その結果は良好でした。

電圧増幅部のアイドル電流を大きくしました。このため、12V駆動時の消費電流は30mAに上昇しました。これは、以前作成したヘッドホンアンプよりも4mA程大きな値です。そして、出力も大きくなりました。これによる、電力増幅部の熱暴走が心配でした。対策として、バイアス用トランジスタとプッシュプル増幅用トランジスタを接着剤で貼り付けました。この、簡易な熱結合でも効果はあるようで、電源電圧を16Vまで上昇させても、熱暴走は起きませんでした。

音自体は、これまでのディスクリートヘッドホンアンプと同じく、ソースに忠実な音です。今回使った謎トランジスタは、これまで使用してきたSS8050、SS8550と比較して、安価なトランジスタです。この安価なトランジスタで、同等の性能が得られるのはいいですね。

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