lm3909は懐かしいけど入手困難です

lm3909のデータシート

その昔、lm3909というICがありました。このICの用途はLEDを点滅させることです。何十年も前のことですが、秋葉原でこのICを買ったのを懐かしく思います。そんな、lm3909ですが、現在では製造されておらず、入手性も極めて悪いです。しかし、乾電池一個でLEDを点滅させることができるlm3909を何とか再現したいと思います。

なぜlm3909を再現したいのか?

まずは、なんといっても乾電池一個でLEDを点滅させることができることです。LEDを光らせるには赤色とか緑色なら大体2Vくらいの電圧が必要です。したがって、乾電池一個でLEDを光らせることはできません。lm3909は、これを可能にしてくれます。そして、このICを使ったLEDの点滅がチョット独特なんです。パッと光ってスッと暗くなる感じです。あの感じを、再現したくなりました。

存在価値の無くなったlm3909

あるサイトの記載によると、このICの登場は1975年とのことです。その当時は、LEDそのものがあまり普及していなかったと思います。そして、とても高価でした。そして、その使用方法も確立していなかったのではないでしょうか。豆電球ならば乾電池一個で点灯できますが、LEDはそうはいきません。まして、点滅させるとなると、更に難易度は増すわけです。しかし、それから約40年で、様子は変わりました。LEDを点滅させるだけのICの需要は無くなったのでしょう。その証拠に、私の知る限りセカンドソースは存在しません。

在庫品は販売されているがバカ高い

当時私が秋葉原で購入した時の価格は一個300円程だったと記憶慕います。そして、併せて購入した赤色のLEDが一個80円くらいだったと思います。今では考えられないくらい高価でした。そして、Aliexpressでは常軌を逸した価格で販売されていました。

Aliexpressで常軌を逸した価格で販売されているlm3909
Aliexpressで常軌を逸した価格で販売されているlm3909

なんと驚くことに、一個619円です。しかも、送料が別途502円かかります。LEDを点滅させるだけにこれだけの投資はできません。そこで、データシートに記載の等価回路を元に、ディスクリートで組んでみたいと思います。

lm3909の中身は、思っていたよりシンプルだった

幸いデータシートは、今でも簡単に手に入ります。そして、データシートにはしっかりと等価回路が記載されていました。

データシート記載の等価回路
lm3909の等価回路

この回路の中で、マルチコレクタ型トランジスタは手持ちがありません。また、ツェナーダイオードも手持ちがありません。したがって、この二つの部品については、工夫が必要です。幸い、マルチコレクタ型トランジスタの方は、カレントミラーとして動作させていることが解ります。したがって、電流精度は下がりますが、二つのトランジスタに分解することができます。また、この回路を流れる電流も十分小さいので、熱結合はしなくても良さそうです。それから、電源電圧を6.5V以下で使うなら、ツェナーダイオードは省略できそうです。その他の抵抗値なども手持ちの部品に併せて、アレンジしました。

回路シミュレーターで動作確認

何となく方針は決まりましたので、LTSpiceを使ってシミュレーションを行いながら、煮詰めていきます。そして、出来上がった回路がこれです。

lm3909を参考に作成したLEDフラッシャー回路
lm3909を参考に作成したLEDフラッシャー回路

トランジスタは、Vbeができるだけ低いものを選んだ方が良いと思います。しかし、基本小電力用トランジスタなら何でも使えると思います。私は、余っていたトランジスタ2N3904と2N3906を使うことにしました。恐らく、2SC1815と2SA1015のような定番トランジスタも使えるはずです。

本当にLEDは点灯するのか、シミュレーションで確かめる

手持ちのLEDの特性が不明でした。したがって、打ち込んだLEDの電気的特性はかなりアバウトです。しかし、Vfが大きく外れていなければ大丈夫だと思います。そして、この回路をシミュレーションした結果がこれです。

LEDフラッシャー回路シミュレーション結果
LEDフラッシャー回路シミュレーション結果

コンデンサのチャージが終わって、LEDが点滅を開始するまで13秒ほどかかるようです。その後は、だいたい0.5秒間隔で点滅するようです。点滅間隔は、回路図中のR8で調整できます。また、R1とR2で点滅開始までの時間を調整できます。ただし、R1,R2はR6と併せてLEDに流れ込む電流量を決定します。したがって、あまり小さくしすぎると、LEDが破損するかも知れません。

実は多彩なlm3909

このICには、データシートの他に、アプリケーションノートが用意されています。この、アプリケーションノートが面白いです。例えば、ラジオを作ったり、拡声器を作ったりする回路例も記載されています。若干無理やり感もありますが、開発者の遊び心が感じられます。まあ、アンプならもっといいICが沢山ありますからね。

lm3909で作るラジオ
lm3909で作るラジオ
lm3909で作る拡声器
lm3909で作る拡声器
lm3909で作る水漏れ警報器
水漏れ警報器も作れます

このほかにも、電子トロンボーンとか、オシロスコープのキャリブレーション回路とか、色々と記載されています。

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